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■濫觴徒然【工房「朋」主宰・森重春幸氏と、伝え受け継ぐと言うこと 】2005.2.19 |
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濫觴の企画で唯一毎年開催する工房「朋」の市松人形展。工房「朋」は、主宰・森重春幸氏が率いる人形制作工房です。森重氏は、幾つかの転職を重ねた末、"たまたま"というしかないきっかけで胡粉(ごふん)という素材に出会い、胡粉の魅力を生かすためには人形が最も適しているという判断から人形作りを始められました。 人形に対する偏愛や関心を持っていたわけではない森重氏ですが、むしろ人形から遠いところから始めた故に、人形にまといつく物語性や強烈な個性そのものを削ぎ落としてゆく人形作りの方向性がはっきりと見えていたとおっしゃいます。 作家性の強い強烈な個性を持つ人形は、見る側に人形の持つ物語を否が応にでも発してきます。工房「朋」の作る人形は、見る側が繰り返し自由に物語を作ることのできるようにと、敢えて抑えた表情にこだわります。市松人形にこだわるのもそれ故のこと。場所や季節、様式に制限されることのない、子供の遊び相手であった市松人形だけが見るものに自由な物語を与える可能性のある人形であると森重氏は考えるのです。
人形という場所。昔、人形は子供の遊び相手であり、母が娘のために人形の着物を仕立てたり、様々な家族の記憶と共に生きていたものです。森重氏は人形を通じて、家族のあり方を「人形という場所」に見つけてもらえたらと願っているのではないかと私は考えます。現代のように、ものを大切に受け継ぐ意識の薄れた家族関係の中においては、むしろ重苦しく感じられてしまう事があるのは致し方ないことなのかもしれません。人形そのものを怖れる方が多いことも否めません。しかし、親から子へ、子から孫へと受け継がれ、家族の歴史を刻むものの何物に代え難い存在は、誇りに思えこそすれ決して怖れるものではないはずです。 例えばおじいちゃんが大切に大切にしてきた年代物のロレックスの時計や、おばあちゃんが大好きだった芭蕉布の着物などを、その子・孫が良さを理解しきちんと自分のものとして受け継いでいるという事の方が、全く同じものを買える財力を持っている事よりも何倍もの価値があると、強い憧れを持って私は思います。 それには家族間の理解と信頼というものがなくてなならないものではないでしょうか。 これは祖母(祖父)のものだったんですと、ちょっと照れくさそうに、でも誇らしげにおっしゃる方に出会いますと、あぁ、この方の家族は良い関係にあるだろうなと思えてしまいます。 伝えるという責任。押しつけではなく、個々にあった形で。昔のものの良さを見直しつつある昨今、一過性のものとしてではなくそれを伝え受け継ぐと言う意識とともに定着すればと願って止みません。 2005.2.19 濫觴・千和 ※企画のご案内のテキスト抜粋。 |
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