濫觴・一樹
徒然なるままに…
濫觴通信
2006年1月
50号
発行:市橋一樹
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【濫觴通信2006年1月50号】

「あけましておめでとうございます」

申 今年の干支は戌(イヌ)である。
 エトとは、十干と十二支のことだから、正確には丙戌(ひのえいぬ)というべきであろう。しかし今年は犬年だといっても、咎める人もいないし、笑われることもないが、今年の干支は丙戌であることを知っていても損はない。
 干支は、紀元前1100年頃の殷の時代に、亀の甲羅や牛の肩甲骨を焼いて占った。その結果を甲羅や骨に記録したものが文字の始まりで、それは「甲骨文」と呼ばれる。その占いの記録の中に干支の表記があり、極めて古い文化であることがうかがい知れる。
 戌(ジュツ・けずる・いぬ)のト文・金文の形は斧鉞の象、剥削(はくさく)に用いる器である。十二支の名に用いるのは仮借(かしゃ)で、字の本義とは関係がない。
 仮借とは、漢字の構造法を六つに分類した「六書(りくしょ)」の中の一つである。姿や形を絵のように表わした山、川、犬、牛などを「象形(しょうけい)」。掌を表わす一線の上に、小点を加えて上。下に点を加えて下とした文字を「指事(しじ)」。一、二、三もそれである。文字の発声を合わせて造字されたものを「形声(けいせい)」。漢字の八割ほどがそれであるといわれている。らんしょうの濫(らん)・觴(しょう)がそれであり、くさかんむりなら藍(らん)。にんべんにすれば傷(しょう)である。
 戌、亥、我、無などは文字の本義に関わりなく用いた文字で「仮借」という。二つの文字を組合わせて一字とした文字を「会意(かいい)」といい、位、家、吾などがそうである。他に「転注(てんちゅう)」もある。
 は犬の字の金文である。金文というのは殷の時代に続く周の時代に盛んに作られた青銅器に刻まれた文字をいい、記号に近い甲骨文から、その造形は文字らしくなってきた。
 犬が関わった文字に「戻」がある。これは戸下に犬を埋めて、地下からの悪霊の進入を防いだ文字である。しかし今日の常用漢字では、犬ではなく大となってしまっている。「臭」の自は鼻のこと。犬の鼻は嗅覚の極めて鋭いものであるから、犬の鼻をもって臭の字としたのであるが、現在は犬が消えてしまって、大きな鼻となってしまった。犬の点一つを取ってしまったとしても簡略されたともいえる程でもないのに、常用漢字と定めた時に、文字の成り立ちを考慮しなかったのか、異議を申込みたいが今さらどうしようもない。
 子供たちに文字を教えるとき、その成り立ちから教えれば、楽しい授業になり文字に対する興味も増して、国語の力がつくことになるものとして考える。
※参考 白川静「字統」

平成十八年新春


【濫觴・一樹 紙上展】